「う゛ーあづーつなーあづーい」
綱吉はというと・・・・居ない。
彼は夏休みだというのに学校に補習授業を受けに行った。
私は行かなくて良いと言ったのに、綱吉といったら
「でも行かないと留年になるし・・・」
と言葉を濁してとぼとぼ出かけていった。
なんて可愛い奴なのだ・・・・←
今はとりあえず彼氏のいない部屋でぼーっとしている。
リボーンはといえば、ビアンキとバカンスに行っているそうで、
今頃きっと青空の下南国の海でぷかぷか浮いているのだ。
「いーなー・・・」
私はしょうもなく独り言を呟くと、
窓から玄関を見た。
「獄寺だ・・・・」
独りは暇なのだろう。アイツはどうせ忠犬だ。
綱吉の帰りを待ち、帰って来たら「十代目ッ!」とか見えない尻尾を振り回し叫ぶのだ。
獄寺はこちらに気付いたのか、「のわッ!」と顔を真っ赤にして尻もちをついた。なんて情けない奴だ。
「、なんでお前十代目の部屋にいんだよ!」
私を指差し、叫んだ。鼓膜が痛い。
「いーでしょ別に。
彼氏の部屋だもん、それにちゃんと許可もらってるし、不法侵入じゃありませーん」
私はべーっと舌を出してやっぱり彼を馬鹿にした。
「ッ!てっテメェ、十代目のモンじゃなければ絶対果たすからな!!」
「うん、別にいいよー」
私は適当に返事を返し、暑いので窓から顔を引っ込めた。
時計は昼前で、もうすぐ愛する綱吉が帰ってくる。
早く帰ってこないかなあと独り言とぼやき、綱吉のベットにぼふんと顔を埋めた。
反動でミニスカートがびらっと捲れた気もしたが、気にしない。
「ん・・・、綱吉ぃ・・・・?」
ガチャリ、と部屋の扉が開いて綱吉は顔を硬直させた。
私といえば、まだ眠くて視界も思考も冴えていない。
「・・・」
何故そんなに口をパクパクさせているのかとベッドに横になったままおもっていた。
ん?ベッド?
あ、そうかパンツか。私はあまりの恥ずかしさに、叫ぶのも忘れて動けずにいた。
「なんすか十代目?」
ご機嫌な獄寺の声が綱吉の奥から聞こえた。
階段を登る音だ。
「あ、やばいパンツが」
口だけ動くけど体が動けない、やばいやばいやばい、獄寺にパンツ見られるやばいやばい!
私は相当焦って、とりあえず綱吉の名前を言ってみた。
「つ、綱吉・・・・」
綱吉は、ばっと私に飛びついた。
瞬間獄寺が扉から顔を見せる。そしてそのままフリーズ。
「んっ・・・・ッふぁ・・・ン・・・」
ごめん、私、綱吉のこと誘った訳じゃないよ・・・・?
なんでキス!
私は綱吉の唇が離れて、とりあえず苦笑した。
「ご、ごごごごめん!!」
綱吉は夢中でキス(それも舌までつめて)したらしく、現在はいつもの可愛い綱吉になっている。
獄寺は相変わらず、放心状態。
「別にいいけど・・・・まあそのおかげでパンツは見えなかった訳だし」
綱吉が飛びついたおかげで私が下着を晒したのは綱吉だけになった。まあ、それも一部問題だが。
「ご、獄寺くん?」
綱吉が放心している獄寺に恐る恐る声をかける。
途端に獄寺は瞳を輝かせた。
「十代目!やはりあなたは男だ!」
「へッ!?」
呆れ・・・、と言うべきか獄寺は何処までも綱吉を慕っているようだ。
私はなんがだ複雑な気持ちになって、綱吉を見た。
「げ、すいません十代目、俺帰ります!」
急に、時計を気にし始めた獄寺は荷物を持つと、どたどたと派手に階段を下りて帰っていった。
あれぞまさに嵐の守護者!
「なんか獄寺って・・・・嵐って感じだよね・・・・ホントに」
私は思わず、苦笑して呟いた。隣に座っていた綱吉も苦笑いをしてそれから沈黙が続いた。
「あの、さっき・・・・ごめん、ほんとに」
沈黙の均衡を破った綱吉はがばっと頭を下げた。
私は黙っていたが、やっぱり堪えられなくなって笑って許した。
「だぁかぁらぁ、助けてもらったのはコッチなんだし、
おまけに一応、私綱吉の彼女だし・・・問題無いでしょ?」
綱吉は気難しそうに、「うん」と言った。
「いいじゃん!獄寺に男見せられたし!」
かっこよかったよ、と付けたしてやる私。なんて優しいんだ!と自分に優越感を抱く。
「じゃあ、もう一回かっこいいって思って」
綱吉の唇がまたくっついた。私はまた恥ずかしくなって顔が真っ赤になって思考が止まった。
舌をつめる動きがさっきより滑らかになって、綱吉の掌が私の頭の裏を支えた。
酸素が足りなくなると思ったのだろうが、綱吉は舌を抜くとゆっくり唇を離した。
「はぁッ・・・・はぁっ」
私にはその数十秒で十分酸欠になった。
顔がいろんな意味で真っ赤だ。可愛い綱吉は私の中であっという間にかっこいい綱吉に塗り替えられた。
綱吉は心配そうに顔を覗きこんでいる。
「全く!暑いのに余計暑くさせてどうするの?」
私は余裕なフリをして、綱吉に抱きついた。
「ツナ、好き」
胸元で呟くと、その返事のようにぎゅうと熱い包容が返ってきた。
暑い夏のある日。
おしまい