僕があの日初めて君を見つけた時、空はどうしようもなく晴れ渡っていた。とんでもない雑魚に絡まれた君は未だ無力で、抵抗の力も知らずに、どうしようもなく、これから始ろうとしていた戯れに酷く怯えていた。




「なあ、君今暇な訳?」

「すんげー美人じゃん!」

「美人っていうより、可愛いでは?」

4・5人の若い男が、の周りの囲んでいた。
は此の近くの中学校に通う女子だ。

「何ですか?、止めて下さい」
迷惑そうに、掴まれた腕を振り払おうとする。
しかし、

その腕の力は予想以上に強い。
「ひゃっはー!
俺ら否定されちゃったよ!!どうする?」



「やっぱ鳴いて貰わないとねえ・・・だろ?

   小 鳥 ち ゃ ん ♪」

首元にかけられた掌が気持ち悪い。
「嫌ッ、離してェッ!!!!!」


「大丈夫、服は破かないよ」
耳元でふっと囁かれる声に震え上がる。恐怖で躰が固まり、瞳に不安だけ映る。決してその光景を美しいなどと評することは出来ないだろう。何故なら今彼女は、


「あはは、家に帰れないもんな♪」

バサッ

「きゃぁッ/////」
買ったばかりのワンピースがずり下ろされ、下着が露になる。卑猥な行為に羞恥を感じる。
「うひゃ、まじ涎垂れるなあ〜」

「嫌、嫌、痛い、あ゛ぁあ゛アァッ…」

「うっせー、俺の咥えとけ」

「うッ、あぅッ・・・・」
男の象徴ともいえるその淫猥な物体はの口の中に無理矢理押し込まれる。気持ちの良いモノではない。恐怖と羞恥に、涙ばかり溢れる。






ガタリ、と誰も居なかった筈の廃工場の入り口から物音が響く。


を囲んでいた男達はふっとから視線を外し入り口を見つめる。


そこに入ってきたのはやけに細身な男・・・曰く少年だった。
「貴方たち昼間から群れてひ弱な小動物虐め?醜いね」
少年は口角を歪め皮肉気味に笑っている。今日は日曜なのにしっかり制服に身を包んでいる。黒い髪が風にふわりと浮かび上がる。

「んだァ?、テメェどこぞの餓鬼だ?」
喧嘩をけしかけるつもりなのか、図体のデカい男が少年の前に立ちはだかった。
もう一人の男が図体のデカい男の肩にのしかかる。

「待てよ、きっとたってんじゃねーの?
それなら邪魔じゃm、!!!」
ガシャン、と金属的な男の向こうから聞こえ、肩にのしかかっていた男が刹那、吹き飛んでいった。血しぶきが辺りを染める。


「聞き捨てならないね。・・・貴方達は此処で咬み殺す」
また少年は皮肉気味に笑った。





<雲雀 side.>
という少女はひどくビックリした顔で此の状景を見てたけど、僕は気にしなかった。というか最初は頭っから早くこの五月蝿い男を消したいとぃう考えが渦巻いていて、それどころでは無かった。目の前の奴等を倒すのにそう時間は掛からなかった。



一瞬で片付けると敷地の隅で怯えていた君を見つけた。

好意なんてもっての他。女子に恋心を抱くということは僕の中で風紀に反逆していたから。

乱雑に投げられた君のワンピースを拾って、君の元へ向うと

「嫌ッ、何もしないで!!!!」

と君は身体を震わせた。多分それは君にとって精一杯の抵抗だったのだろう。でも全く、怖くなかった。むしろその恰好はとても刺激的だったと思う。



「僕、興味無いから」

衣服を置いて立ち去ろうとしたら

「ま、待って!!」

なんて云うもんだから振り返ると半裸のままの君は僕の制服の裾を掴んで


「置いて・・・いかないで・・・」

と声を震わせた

僕は小さく溜息を吐いた。




夏は汗ばむ だからあまり好きでは無い

君の隣に座って空を見渡した
上を見ててもよく分かるのは、未だに僕の制服の裾を掴んでいることと震える身体で一生懸命衣服を着ている事。時折、「ひッく!」と聞こえて、泣いているのは目を瞑ってても解かった。

僕はあまり人の心に感情を移入するのは好きでは無いけど

きっと怖かったんだろうかなんて考えた


「着替えた?」

「うん」

改めて君をよく見ると、それはそれは端整な顔立ちをしていた。栗色よりずっと淡い髪の色で、ハーフを思わせた。肌は透き通るように白くて、今まで男が出入りしていた唇はふっくらと赤い。何故が苛立たしげなおっとりした瞳が僕を空ろに捉えている。

あの変態動物が唸る理由も解かる。

「立てる?」

「わかんない・・・」

「ほら、手握って。」

「うん」

僕の手を握っても君は下半身に力が入らないようで

しょうがないから抱きかかえてやると小さな声で

「重くない?」と呟いたから

「軽すぎるよ」と毒を紛らわせて云ってやった。

家の位置を聞くと、結構遠くてビックリした。

君の細くて長い腕は僕の首に回っていて、でもまだ震えていた。沈黙になってるのが悪いのかと思って、声をかけるのは好きじゃないけど一応名乗ることにした。僕から名乗ることは本当に珍しいことだった。何故そう思ったのかは分からないけど、君はじっと僕を見ていた。

「僕、雲雀恭弥」

「ひば・・・り、さん?」

「そう」

「ありがと、ひばりさん。わたし、

君は未だ引き攣ってはいたものの、初めて笑顔を浮かべた。

僕は心なしか安心した

もうすぐ並盛商店街に入るので人が多くなる。もう歩けるのか聞いてみると、

「もう歩けると思う・・・」

は遠慮がちに云った。地面に下ろすとゆっくり、ふらつきだけど歩き始めた。の白く細い足はとても頼りない。







何故かは解からないけど、は急に人が多くなった商店街を怯えた。まるで本当の小動物か何かのように瞳に涙を溜め必死に首を振る。君の声が強張る。

「嫌なの・・・怖い・・・の」

でもこの通りを抜けなければ君の家へはたどり着けない。

周り道は危険な箇所があると草壁から聞いていたので、僕はしょうがなく君の手を握った。ただでさえ汗ばんでいるのに。

「大丈夫、僕も一緒だから」

と自分でもよく意味が分からない言葉を並べてみた。
いや、勝手に口から零れた。

君は涙目になって、微笑むと小さな力で握り返した













「雲雀」

「何?」

それから、僕とはどちらが云うまでもなく、自然と一緒になって、キスしたりした。君から好きと言う訳でも、僕から好きと言う訳でもない。が傍に居るのは辺り前になって僕はそれ以上望まなくなった。(まあ、に近づく虫は全て叩き落しているけれどね)

時折は、僕の手を握って目を閉じる。

「どうした?」




「こうやってると、あの日が蘇って・・・雲雀が守ってくれる気がするの」



頬を赤らめ、そう言うのだ。





おしまい