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「綱吉には、わかんないよ!」 とりあえず私は、周りにあるもの全てにあたり散らかすように 眉根を寄せ、不機嫌を取り繕った。 綱吉はというと、可愛らしくオロオロしてそれでも瞳はしっかり私を見据える。 さかのぼるは1時間前、 綱吉と私と獄寺は商店街をぶらついていた。 普段からよく私は2人とつるんでいる。 本当は山本もいるんだけれども、当の本人は部活動の為に帰りが遅くなるのだそうだ。 「2人とも、の事いじめるなよな」 とか笑顔だけ振りまいて走り去っていく。 「ちッ」 と獄寺はあらかさまに私の存在を否定するように舌を打った。 獄寺は普段からつるむと同時に私を毛嫌いしていた。 最初の頃はなんだかんだいって結構優しい獄寺だったが、ある日から私を避けていた。 「十代目、帰りましょう」 というか私の存在を消していた。 獄寺は、綱吉を手を引くと教室から出て行く。 綱吉はそれでも私の名前を呼び続けた。 「、一緒に帰ろう」 はいつも独り はいつも泣いている は援助交際している はクラスの男子をてなづけてる は、 は、 は。 そう。それが私。 クラスでいつものけ者にされて、隅に追いやられて その愚痴が獄寺に知れた途端、彼は私を嫌った。 山本もわたしの事嫌ってる。知ってる。 彼の悪い所、知ってるもの。 前に制服破られた時、山本はその事件の主犯格だった。 知ってる、だから。 前にシューズ捨てられた時、前に机捨てられたり、 知ってる。知ってる。皆私のことキライ、キニイラナイ。 そしてさっき、 いや、つい1時間前、 獄寺はとうとう私にキレた。 「テメェみたいな変態野郎が十代目の近くいるのが気にくわねえ、 「獄寺くんッ!!!!!」 綱吉は、獄寺の頬を平手でぱしんとひっぱたくと、 私の手を握って走り出した。 商店街のセールの音楽が五月蝿い。 綱吉の手が熱い。 息遣いが荒い。 私たちは走った、走って、走って、何もかも忘れるくらい走り続けた。 「つ、つ、綱吉、も、もう、いッ」 「え!?あ、うん!」 何故か私は不機嫌になって、何故か私は君が嫌いで嫌いで。 乱暴にするつもりじゃないのに、心とは裏腹に手が反応して私は君との掌の繋がりを断ち切った。 「・・・?」 「ヤメテ!、私の名前もう呼ばないで!!!!」 「でも、オレ、心ぱ「わかんないよ!!!!!!」 駄目だなあ、私、此れだから嫌われるんだ。 「綱吉にはわかんないよ!」 「なっ、」 とりあえず私は、周りにあるもの全てにあたり散らかすように 眉根を寄せ、不機嫌を取り繕った。 綱吉はというと、可愛らしくオロオロしてそれでも瞳はしっかり私を見据える。 今に至る。 「あたしの苦しみ、知ってるはずが無いよ!」 今更、此処どこだろう、とか考えてみたり、 あの曲聴きたいなあなんて戯言ばかり浮かんでくる。 味方だった綱吉さえも敵に回して、私は馬鹿だ。 どうしようもないくらい、馬鹿。 「じゃあ、な、なんで、・・・・」 「?」 「なんでオレの前で泣くんだよ・・・・!」 「・・・え? な、んでって・・・」 もうすぐ夏かあ、暑いなあ、最近。 私の目の前はきっと暑さのせいで歪んでて、 綱吉の栗色の髪がさらさらと風に靡くのも、私の汗が首に滲んでいくのもきっと、 夏の所為。 「」 ふっと、顔を上げる。 しょっぱい、此れもきっと、夏の所為。 「泣くな、」 「な、いてない」 「じゃあ、笑えよ」 「泣いてない、もん」 私が呟くのはわがままの一点張りで、もうこの際徹底してわがまま言ってやると思って。 「泣いてない」 「泣き顔も、いじめも似合ってないよ、」 「泣いてない」 「」 「泣いてな「!」 今度は苦しい、ぎゅう、と綱吉の細い腕が私を包んでいる。 蒸し暑いのに、抱き合ったりしちゃって、 なんて此の辺のおばさんに言われたらそうしようと思っていたのにその心配は無かった。 「綱吉・・・・?」 「、オレ、ずっと味方だからさ・・・ オレはに何にも出来ないけど、 一緒に帰ったり、一緒に笑ったりなら出来そうなんだ だから、泣くなよ」 「噂は?」 「信じなてないよ がそんなことするはずないじゃないか」 「じゃなくて、あたしと噂が広まったら?」 綱吉は腕を緩めて、私を優しくみつめた。 「むしろ、嬉しいかもな」 はにかむように、笑う。 嗚呼、私も君のように笑いたい。 君のこと嫌いなのに・・・・ 一緒に笑ってみたい。 心に広がる、穏やかな風が 私と君の心を繋げてくれるのなら もう少し、笑っていようかな 「綱吉」 「ん?」 「帰ろう」 ああ、そうか 嫌いの裏は好きだから。 君と私は歩き出す。 おしまい |